吉宗公の御代に両国橋の掛け替えがあった。工期がたびたび遅れ 担当役人らも何度か交代となったため、町の噂にも「両岸から伸ばした橋が川の真ん中で合わないんだとよ」「また、工事が失敗したらしい」と現場の不出来を取りざたす声がかまびすしかった。 “#007 両国橋の掛け替えのこと” の続きを読む
#006 癪聚のこと
そう遠くない昔の話である。片田舎で読み書きを教えていたある人が常に癪の病に苦しんでいた。 “#006 癪聚のこと” の続きを読む
#005 有徳院様の弓の格言(御仁心のこと)
ある年、有徳院様が郊外へ出かけた際、遠い木の枝に鳶が止まっているのをご覧になった。弓を用意するよう仰せられ、狙いを付けられたところ鳶は飛び立ってしまったのだが、 “#005 有徳院様の弓の格言(御仁心のこと)” の続きを読む
#004 小野次郎右衛門、島流しに遭うこと(召し帰されること)
世間にひとりの馬鹿がいた。両国のあたりに「剣術無双 誰であろうと真剣で立ち会え たとえ斬り殺されようとかまわない」と看板を出し、日々見物人が鈴なりになっていた。 “#004 小野次郎右衛門、島流しに遭うこと(召し帰されること)” の続きを読む
#003 小野次郎右衛門の出世のこと(伊藤一刀斎のこと)
剣術の流儀を広めるために諸国を修行しながら巡っていた伊藤一刀斎は、あるとき大阪へ向かう淀の夜船に乗り合わせた。この船の船頭は腕力には相当の自信を持っており、一刀斎が木刀を携えているのを見て言った。 “#003 小野次郎右衛門の出世のこと(伊藤一刀斎のこと)” の続きを読む
#002 下石道二斎のこと
宝蔵院の末弟子に道二斎という男がいた。磨き上げた槍術の技が大猷院様のお耳に達して御前に召され、別にお召しのあった素槍の達人である浪人と試合をするよう仰せがあった。 “#002 下石道二斎のこと” の続きを読む
#001 禅僧の狂歌のこと
芝のあたりに柳屋という金物屋があった。主人は禅を好み、家業の合間にはもっぱら禅の書物を読み、座禅などして過ごしていた。 “#001 禅僧の狂歌のこと” の続きを読む
#000 序
この『耳袋』は、公務の合間に古老から聞いた物語、あるいは家を訪ねてくる人と雑談をするなかで、心に留まり面白いと思ったこと、また、子弟のためになると思われることを書き記して袋に入れておいたものが積もりに積もって山となったものである。 “#000 序” の続きを読む