#071 山中鹿之助、若武者の初陣談を見極めること

山中鹿之助はかつて幾多の戦場で活躍し、数々の武勲をうち立てた世に隠れなき勇者であった。ある合戦が済んだときのことである。その日、初陣を遂げた若武者ふたりが山中鹿之助に心境を語った。

「それがしは今日初陣を果たし、初めて敵と槍をあわせることとなりました。

いざとなると普段の気構えはどこへやら、敵と向かい合うと全身の震えが止まらず、まともに敵の顔を見ることすらできない有様。どうにか踏み込んで槍を繰り出し首を挙げることができましたが、鎧を結び合わせた糸のほかはまったく目に入りませんでした。初陣とはこのようなものなのでしょうか」

「今後とも稽古に精を出したまえ。きっと武辺ぶへんの人となるだろう」

続いてもうひとりの若者の番となった。

「それがしはそれほどでもありませんでした」と、目を付けた敵と名乗り合ったこと、その敵は○○おどしの鎧に身を固め、○毛の馬に跨っていたこと、槍を突き刺した場所など、その場面が目に浮かぶがごとく鮮やかに語って見せた。

山中はこの若者にも先の若者と同様の言葉を与えた。

ふたりがその場を去った後、傍らにいた人がどちらが本当なのかと尋ねたところ、山中は次のように語った。

「最初に尋ねた若侍はきっと武辺の士となるだろう。だが、後に尋ねた若者ははなはだ心もとない。おそらく拾い首ではないか。そうでないとしても、戦を重ねては遠からず命を落とすにちがいない」

はたして後日、その言葉どおりであることがわかった。

「それがしなどは初陣また二、三度目の合戦では最初の若武者と同様震えが止まらず、目を開いて顔を上げることすらできるものではなかった。ただひたすら相手を突き伏せることだけを考え、結果、運良く首を取ることができたまでのこと。合戦においては場数を踏まないとなかなか冷静にはなれないものでござる」と語ったとのことである。

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