#057 酒井忠貫、倹約を守ること

酒井修理太夫忠貫は、まだ年の若い人である。学問を好み、下屋敷に学校を開いて老若を問わず学問に取り組ませ、また、武芸をも殊の外熱心に奨励したという。

奥方は京都の久賀家の息女である。忠貫は婚儀の前に木綿の衣類十着を新婦のために用意した。老臣、老女たちは慌てた。

「これは一体いかなることでございますか」

「予が倹約を尊ぶのは江戸に住む大勢の家臣達を養育し、また、公儀より仰せつかった御用向きを滞りなく勤めたいという所存からである。

予が常に木綿の衣服を着用しているからには、その妻になろうとするもの、当然綿服を用いるべきである。もし、これを嫌がるようであれば上方へお返し致すまでのこと」

そう言って、婚姻の前にこれらの衣類を贈ったという。

当時、評判となった出来事であり、家中とも贅を凝らすことなく財相応に暮らしたとのこと。人の語ったままに記す。

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