#035 陽物を祭り富を得ること

ある商人が西国へ行く途中、中国地方の旅籠に泊まり、伎女を相手に酒を飲むなどしていた。夜中頃、旅籠の主人らしき男が、家の隅にある神棚のようなところで灯明をともし、御神酒をあげてなにやら一心に祈っている様子である。不思議に思って一緒に寝ていた伎女に尋ねた。

「あれは何を祈ってるんだい」

「あれはおかしな神様でね。この家の主人はもともととても貧しい出で、朝夕のまんまさえまともに食べられないこともあったくらい。あるとき、道で石でできた男のあれを拾って帰ったの。陽気第一でめでたいとかいって、それ以来朝夕お祈りしていたら日増しにお金回りが良くなって、この旅籠を開くまでになって。いまでは私のような伎女も百人くらい抱えてるというわけ」

おかしな話だと笑って、そのまま寝た。

夜明け前になんともなしに目を覚ました商人は、ふと思った。

(あの御神体を盗めば、俺も金持ちになれるだろう)

みな寝静まり、隣に寝ている伎女も寝ているのを見すまして秘かに神棚を探り、例の男根を奪って隠し、素知らぬ振りで旅籠を出た。その御神体の霊験であろうか、日増しに栄え、ひと財産を築き上げたという。

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