#018 妖物は豪傑に勝てないということ

 土屋侯の領地、土浦の家士に小室甚五郎という者がいた。大層気が荒く、日頃から鉄砲を好み、山で猟などをして楽しんでいた。

その土地に土浦の農民達が官妙院と呼ぶ狐がいた。その妻の狐はお竹と呼ばれ、農民達の中には稲荷神社を建て、二匹の狐を祭る者もいた。

あるとき、甚五郎はお竹狐を弾二発で仕留め、酒の肴にして食ってしまった。それからほどなくして土浦城下に近い他領の農民の妻に官妙院狐が憑き、様々なことを口走っては甚五郎を恨み罵った。その夫はもちろん、村中の者が集まって責めたてた。

「どうもわけがわからん。甚五郎様に恨みがあるのなら甚五郎様に取り憑くべきだろうが。縁もゆかりもない他領の者に取り憑いて苦しめるのは一体なぜだ」

取り憑いた狐が答えた。

「わが妻を殺して食ったほどの甚五郎に取り憑けようはずがない。土浦へ入るのさえ恐ろしいのでお前の妻に取り憑いたのだ。頼むから甚五郎を殺してくれよ」

土浦に知り合いのいる者を通じてこの話を聞いた甚五郎は「許し難い畜生だ」だと大層怒った。

頭役人に届出のうえその村にやって来ては、

「この不届きものの畜生めが。他領の人を苦しめるとは不埒もはなはだしい。その女から離れなければ主君へ申し立て農民らが建てた神社を叩きつぶし、たとえ何年かかろうとも地の果てまでも追いかけてお前を殺す」

と、さんざん脅したて、地元の神社でも同じように脅した。すると、たちまち狐は落ちて何の祟りもなかったという。


  • つちやこう 常陸国土浦(茨城県土浦市)城主

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