#08 死に対する無畏

源蔵はまた、勝五郎は生まれつき少しも化け物、幽霊などといったものを怖がらないという話をした。

先述の源七は狂気を病んでいたので別に小屋を建ててそこに住まわせていた。死ぬ直前には鬼気迫る容態となって姉・兄などは恐れて小屋の側にすら近寄らなかったのだが、勝五郎だけは「源七さんはもう長くないようにみえる。かわいそうだ。薬も食べ物も存分にあげて欲しい。俺がいつでも持っていくから」といって、夜中であっても食事や薬を手ずから与えた。

彼が死ぬと姉・兄などは怖がって厠へもひとりでは行けないようになったのだが、勝五郎は「死んだ人の何が恐ろしいものか」といって少しも怖がらなかった。また、死自体をまったく恐れていないという。勝五郎になぜ死が怖くないのかと尋ねたところ、次のように答えた。

「俺が死んだと人にいわれて初めて死んだことに気がついた。死体も見たけど、そのときは自分では死んだとは思わなかった。実際、死んだときにも端から見るほど苦しくはなかったし。

死後の世界は腹が空いたが、暑くも寒くもない。夜でも真っ暗闇ではなかった。歩きに歩いても疲れることはなく、老人と一緒にいれば何も怖いことはなかった。六年目に生まれたと聞いたが、あちらではほんのわずかな間だったように覚えている。それに御嶽さまは『死ぬのは恐ろしいことではない』と仰っていた」

「御嶽さまとはどのようにしてお会いしたのか」

勝五郎は他のことに話を逸らし、答えようとはしなかった。

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