#06 謎の老人と烏

彼の前に現れた老人について、ある人の書いたものには「爺さまのような人が来て」云々とある。


(この七月九日に、先頃江戸へ出たときに訪問した家々に礼をするためといって源蔵がまた勝五郎、姉ふさ、兄乙次郎を伴って訪れた。折しも私は越谷に出かけていたのだが、三夜ばかり我が家に泊まっていったということである。家には太田朝恭、増田成則らがおり、その老人の様子を詳しく尋ねると、白髪を長く垂らし、白い髭が長く生えていた。白絹の衣服の上に黒い紋印のある袖の大きな羽織のようなもので後ろに長く垂れる上着を着て、くくり袴をはき、足には外側が黒く、内側が赤い丸い形で足の甲まで覆ったものを履いていたという)

大変興味を惹かれた。「坊様だったか」と問うと頭を振る。「では、私の頭のようだったか」と事負が問うと、私の頭を指して「先生の頭のように髪を長く垂らしていた」という。また、烏のことについて、木に留まっている烏を指さし「あんなふうだったか」と問うと「あれよりは小さくて目つきが怖かった」という。

死ぬと御崎烏(また目前烏(めさきがらす)という人もいる)というものがいるとの言い伝えがあるが、思うに昔再生した者、または蘇生した者がいて語り伝えたものに違いない。烏ととびについては持論があるがここには記さない。


  • みさきがらす 神霊の使わしめとしての烏。山の神の使わしめという。また、墓前の供物に群がるところから邪霊の代表のようにもいわれる。〈日本国語大辞典〉

コメントを残す