他愛ない戯れ言や町人達の作り話などは取り上げるに値しないが、この時代の姿を映し、あるいは教訓となるものがあるかも知れない。桑原予州に見せられたものを以下に記す。
仁過ぐれば弱くなり、義過ぐればかたくなり、礼過ぐればへつらいになり、智過ぐればうそをつく、信過ぐれば損をする
(仁:やさしさ 義:義理 やさしくしすぎるとつけあがられる。以下略)
気はながく勤めはつよく色うすく食細くして心広かれ
(気は長く持ち、勤めはしっかり、色欲はほどほどに、食べ過ぎず、心は広く)
世の中は諸事おまえさまありがたい恐れ入るとは御尤もなり
(世の中は万事につけ「そちらさま」「ありがとう」「恐れ入ります」「ごもっともです」の心を大切に)
不用なは御無事御堅固いたし候つくばい様に拙者其許
(なくなってほしいものは無意味な社交辞令「つくばい様(目下の宛名に添える敬称)」「拙者、そこもと」等、過ぎた堅物)