ある儒者の語った話である。
「君父を弑し、あるいは盗賊をなし人倫に背くことがあれば、公儀あるいは領主、地頭が直ちに誅戮を加え給う。これが天道の常である。しかるに、たいした悪事ではない日常の小事で道に背いたことがあっても上から誅戮を加えるには至らない。とはいえ、天道が許し給わねば、たとえば三間の道を一間ずつ狭くされることだろう」
大変面白いたとえである。父母が子を思うにも、君が臣を見るにもこの心があってしかるべきである。小さな悪事であっても慎むべきこととここに記す。
さんけん 一間=約1.8メートル