大石良雄(※内蔵助)のものと伝えられる小刀を見たことがあるという話を柘植長州がしてくれた。槍術の指南をしている喜多伴五郎という者が所持しているとの話である。 木束の小刀であり、銘彫りは次のとおりだったという。
万山不重君恩重 一髪不軽我命軽
(※我が君の恩寵は万の山より重い。我が命は髪の毛一本より軽い)
この句は良雄の父が彫りつけて息子に与えたものであり、良雄はこれを所持して報仇を遂げた後、泉岳寺に納めた。これを伴五郎がもらい受けて今に至るらしい。
内蔵助の志を励ます父の意志を暗に伝えようとしたものだろうと言われている。